大好きだとは言えなくて。

 「今度一緒にごはんでも食べに行こうね」

 そんな彼女の一言は、社交辞令だって分かっているのに、僕のことを期待させて止まなかった。彼女は数年来付き合ってきた彼氏と別れたばかりで、もしかしたら、単に寂しいだけなのかもしれない。それを、たまたま偶然久しぶりに再会した僕で埋めようとしている。それだけなのかもしれない。

 だけど、僕は。そんな何気ない彼女の一言にも、期待せずにはいられなくて。

 だって。僕は彼女のことが、彼女が先輩と付き合っていたあの頃からずっと、好きで好きで仕方なかったのだから。未だにこんな気持ちでいる僕のことを、他人は笑うかも知れない。でも、自分の気持ちに正直になるには、今しかない。そう、思っていた。

 そして。

 夕焼けが空を赤く染める頃。夏の西日の暑さを真正面から受けながら、僕は彼女に告白をして。夕焼けの逆光の中、彼女の表情が上手く読みとれなくて、僕は途方に暮れたんだ。