「いま、会いにゆきます」(市川拓司・小学館)

 ―――読了。
 こんなに心動かされた小説を読んだのなんて何時以来だろう、というほどに素晴らしい作品でした。描かれている物語としてはとても単純で、技巧的に秀逸だと言うほども無くて、ストーリー的にも単純で。最後にやや展開するものの、基本的には真っ直ぐなストーリー展開。なのにこれほどまでに心動かされてしまったのは、ひとつひとつの言葉に込められた意味が、私たちの心に響いたから。たぶん、そう思うのです。
 最初のほうを読んでいたとき、最終的に自分が涙をボロボロ零すことになるなんて想像もできませんでした。泣けるとは聞いてはいましたが、最初の頃はそんな事は無いだろうって高をくくっていたんです。でもある瞬間、カチリとスイッチが入ってしまって、あとはただただ目頭を押さえつつ、最後まで一気に。契機は、「いま、会いにゆきます」という言葉の意味に気付いたとき。やられた、といった感じでした。
 私がこんなにも他人に本を薦めることは珍しいのですが(趣味が偏っているので)、取り敢えずこの本だけは読んでおくべきだと思います。機会があるなら、絶対に読むべきです。絶対に損はしませんから。
 さて、私はこれから、取り敢えず市川拓司氏の小説を今年中に全て読もうと思います。それと、映画も絶対に観る方向で。尤も、この作品を映像化することに対する不安は多少ありますが……。