乾電池。

 ホテルとかマンションとか集合住宅とか、そういう場所に不可欠なものが防災設備ですよね。ウチのレストランはホテルの中にあるので当然(というかどんな場所でも当然だろうとは思うのですが)、そういったものが各所に散りばめられています。
 そんな中、レストランの厨房の中のとある場所ににひっそりと、油汚れ塗れになった非常灯(壁に設置されていて、外すと自動的に点灯する懐中電灯)があったのです。今日のディナータイム、開店直後の暇な時間に掃除をしていた時、その汚い非常灯をキレイにしようということになったのです。その汚さたるや、たとえ灯りが点いていたとしても点いているか否かすらも判別できないほどだったので、張り切ってキレイにし始めたのでした。壁から外しても点灯しない非常灯を、洗剤をつけた雑巾で拭くのです。
 ……ん? “点灯しない”非常灯?
 あれ、点かない。電池が切れてるのかな。でも電池切れの非常灯なんて何の役にも立たないよねって言うかそんな簡単に電池切れになるものですかアレって?
 でも、点かないものは点かない。もしかしたら壊れたのかもしくは壊してしまったのか? 取り敢えず僕は、乾電池を取り出してみました。そんな僕の目に飛び込んできたものは、あまりにも衝撃的な一文だったのです!

    有効期限 `89/04

 ……いくらなんでもそれはないんじゃないかなぁ、なんていうようなことを僕は思うわけで。